10.3.10

「価格」「金額」「料金」「値段」「費用」のちがい

価格:
「商品の販売価格」「市場価格」「価格競争」「価格動向」「価格査定」「適正価格」
ものの値打ちを、金額であらわしたもの。

金額:
「金額を計算する」「購入金額」「被害金額」「金額目安」
数字で表された金銭の量。

料金:
「利用料金割引」「料金プラン」「電話料金」
ものの使用や見物、施設の使用や入場、かけた手数などに対して支払う金銭。

値段:
「値段をつける」「値段を鑑定する」「お値段以上」「値段据え置き」
商品を売買するためにつける金額。

費用:
「固定費用」「変動費用」「精神的費用」
ものを買ったり、何かをしたりするときに必要な金。

価格も値段も料金も、価値を金額で表現することは共通。

「価格」基本的に売買目的の「商品」に対して使う。金額は需要と供給のバランスに基づいた客観性を感じる。「格」はルールを意味するから、ルールとなる貨幣の量を重視した表現になると思う。

「値段」は、価格ほどの客観性を感じない。商品以外のもの、本来価格を付けられないもの、貨幣の量に換算できないものでも比喩としてつけられる。「段」は等級を意味から、貨幣の量を等級で考えた場合、ルールよりおおざっぱな印象がある。価格」や「料金」の意味合いも含む、広い使い方ができる。

「料金は」、商品よりもサービスに関して使う傾向がある。

「金額」は貨幣の量を具体的な数値で示すことに重点を置く。

「費用」は、経済活動に伴って支払う金銭。適用範囲の違いから様々に分類できる。収入・収益の反対にあたり、会社で使われることが多い。

「価格」「料金」の上昇・下落には、やむをえないような印象を感じるが、「値段」の上下、値上げや値下げは、恣意的な印象が強い。

7.3.10

「清楚」「可憐」の違い

清楚:
飾り気がなく、きよらかなこと。特に女性の姿や服装についていう。

可憐:
かわいらしくて、いたわりたいこと。

「可憐」は「憐れむべし」だから、「いたわりたい」気持ちがあり、その対象は「かわいい」となる。「可憐しい(いじらしい)」のような読みもある。

「清楚」の「清」が、すがすがしい、きよらか、というのはわかるが、「楚」はいばらや刑罰のむちがもともとの意味で、どうも美人とあまり関係がない。
「清楚」なら美人の形容だが、「苦楚」「辛楚」「酸楚」「痛楚」はどれも痛くて辛い「いばらのとげ」のイメージが強い。「楚楚」でも、美人の形容と苦痛と、同じ言葉なのに正反対の意味がある。というより、「清楚」はかなり例外的な「楚」の使い方だと思われる。

どこで「楚」に飾り気のない女性という意味が与えられたのか? たぶん「楚腰」という熟語にあるようだ。
これは「楚の霊王が腰の細い美女を好んだ」故事に由来する熟語で、「美人のほっそりした腰」を意味する。
ただし、王の好みに合わせようと無理なダイエットに励んだ結果、餓死する女性が宮中に多くいた、と故事にはある。思うに、王の目を奪う美の基準とは、命がけで(それこそ、むち打ちの刑罰を受けるがごとく)手に入れるものだったのだろう。
杜牧の詩「遣懐」にも書かれているから、男から見た女性のタイプとして、「楚」は飾り気のない、ほっそりした、という意味が加わったと思う。(その裏に、餓死した女性が多くいたことは、薄められていったのだろう。合掌)

「清楚」は飾り気が無く、清らかである。特に姿や服装についていう。ほっそりした痩せ型の女性を意味する。少女に対して使うのは、かなり違和感をおぼえる。
「可憐」は「かわいらしい」ことに重点を置いている。姿や服装は「かわいらしさ」を強調するものであることが大事だろう。また、どちらかといえば少女などに使うもので、大人の女性に対して使うと、「子供の持つピュアなイメージ」がある、と受け止められるように感じる。

「承認」「承諾」のちがい

承認:
「国際政治における国家の承認」「天皇の国事行為における内閣の助言と承認」
「大手二社の事業提携を司法省が承認」「型式承認試験」「日本野球機構承認」

承諾:
「売渡承諾書」「使用承諾証明書」「承諾殺人罪」
「本人の承諾なく写真撮影は違法」「内定承諾」

「承」は「うける」、相手からおくられてくるものごとをうける意味。
「認」は「みとめる」、確かにその通りだ、正しい、当然だとして受けいれる意味。
「諾」は「うべなう」、ひきうける、「はい」と答える意味。

どちらも「相手のたのみや要求を聞いてうけいれる」ところは共通している。
しかし、以下の点で異なると思う。
「承認」は、たのみごとや要求に対し「客観的に正当」と認めてうけいれる。特に社会的権威の高い組織(国、団体)または個人が好んで使うと思う。
「承諾」は、たのみごとや要求に対し、客観性よりも「当事者が賛成」として、うけいれる。法律的な厳密性や、かしこまった印象をうける。

6.3.10

「型破り」「形無し」「型にはまらない」の違い

形無し:
本来の価値が全面的に傷つけられ、惨めな状態になる。とてもよくないイメージがある。

型破り:
考え方や行動が、一般常識の範囲を超越していること。既成の枠を破壊して、新しい流れを作るエネルギーとオリジナリティを感じる。

型にはまらない:
「型にはまる」が、個性や独創性を認めず、強制的に一定の枠に押し込んで特徴を無くしてしまうことだから、その反対の意味。個性や独創性を発揮すること。「型にはまる」よりも、柔軟で多用な手段で問題解決に取り組めるから、「型破り」ほどではないが、「型にはまる」よりずっとよいと思う。

「形無し」と「型破り」では、「かた」に当てはまる漢字が異なる。
「形」はもののかたち、人のすがたを指す。
「型」は鋳型から転じて、お手本や、しきたりを指す。

歌舞伎役者の中村勘九郎さん(TV番組いろいろ)や、落語家の立川談志さん(書籍:続・働く理由)の意見をまとめると、
型(ここでは、長い伝統の中で系統立てられた芸能の基礎。芸の芸たる核心で、時間をかけて学ぶことが前提)
・「型」を学んで自分のものにした人が、「型」を破れば「型破り」
・「型」のない人が、「型」を破れば「形無し」

自分なりに解釈すると、
「型破り」は破るべき「型」を会得し、それでも抑えきれない個性が溢れ出て新たな潮流を作ること。
「形無し」は破るべき「型」がないから、手本も基礎もない、結局姿形すらない惨めなもの。
ここで使われる「型」「形」は、大変重要な意味があります。一見マイナス要素に見えるものを、粘り強くプラスに置き換える努力が大事といえます。

「型にはまらない」は、個性や特徴を発揮することに重点を置いています。
ここで使われる「型」は、「型にはまる」の意味で使われる、マイナス要素の強いものです。ただ「型破り」よりは、オリジナリティなどにおいて劣る印象があります。「型破り」が破る「型」がないわけではありません。あるけど、会得の度合いに関しては、「型破り」に及ばないと思えます。「形無し」よりも上位にあることは当然です。



「節約」「倹約」「質素」の違い

節約:
「時間の節約」「水の節約」「経費の節約」
無駄がなるべくなくなるように努めること。

倹約:
「倹約令」「質素倹約」
金や品物を無駄に使わないこと。

質素:
「質素な生活」「質素な食事」
無駄をはぶき、ぜいたくをしない。飾り気のないこと。
これだけ名詞だけでなく、形容動詞もある。

「約」は無駄をなくして切り詰める意味がある。
「節」は、ひかえめに、ほどよくするの意味あい。「節電」「節水」「調節」のような熟語がある。
「倹」は、つつましく、無駄な金を使わないの意味合い。江戸幕府が財政緊縮および贅沢の禁止をめざして頻繁に「倹約令」が出されている。
「質」「素」は、どちらも飾り気のない、ありのままの意味。

「節約」は、無駄があったら、なくなるように努める。ただ、やたらと努力するのではなく、「調節」するような感じで、普段から心がけるように、というほどの精神的余裕が感じられる。
「倹約」は、「節約」の上位にあるもので、支出の抑制が最優先課題であり、待ったなしの危機感や、何が何でもやらねばという気迫が強く感じられる。
「質素」は、収入に対し必要最低限の支出をする生活をしていれば、無駄な贅沢はないという考えが見える。特に「外見や生活ぶりの見た目」に重点を置いていると思う。

「節約」「倹約」「質素」いずれも、支出を抑制し、負債をなくす「目的意識」はあるが、取り組む姿勢の程度に差がある印象を受ける。
ただし、絶対に必要な支出まで渋ったりしない。渋る場合は「けち」「しみったれ」になると思う。

「濃密」「濃厚」の違い

濃密:
「濃密な関係」「濃密な味」「濃密な描写」「濃密ジェル」
色彩や感情などがこくて、密度が高い。

濃厚:
「濃厚な味わい」「どろり濃厚ピーチ」「濃厚なラブシーン」「敗色濃厚」
色彩や味わいがこくて、こってりしている。

「濃密」の場合は、有形無形を問わず、密度の高さに重点を置いている感じがする。
例えるなら、極小の粒をたっぷりと集め、凝縮させた結果、濃くなると思える。

「濃厚」の場合は、基本は「色・味・におい・成分」などに限って使う。
「濃密」のように、極小の粒を集めるところは同じだが、凝縮させるまではいかない。
「厚」の字が示すように、薄いものを何枚も積み重ねた結果、できる濃さだと思える。
それが転じて、「人間同士の関係」や「ある可能性が強く予想できること」にも使える。

「敗色濃厚」というのは、敗因が時間の経過とともに積み重なって「敗北する可能性が極めて強いと予想できる」ことだと考える。
「敗色濃密」と言わないのは、「濃密」に薄いものを積み重ねるような時間の経過が感じられないからだろう。

「濃密な味」は、味の成分がぎっしり詰まっているという印象を受ける。
「濃厚な味」は、味の成分がたっぷり入り、ちょっとしつこいような印象を受ける。

「濃密な関係」は、粒子がぎっしり詰まるような近さ・狭さを感じる。物理的にも精神的にも「距離」に焦点を当てている印象。
「濃厚な関係」は、時間や経験を「積み重ねた」厚みを感じる。時間や経験の「長さ」に重点をおいた印象。

似ているけど、微妙な違いがあると思った。

5.3.10

「キャッシング」と「ローン」の違い

どちらも借金に違いない。
時代の流れで細分化が進んでおり、明確な定義はない。
用法は業者によって異なるところは注意。借りる前に、審査基準・利率・限度額・返済方法などの詳細をチェックしておかないと、トラブルの元になる。

「ローン」は英語:Loan(貸付金)が原義。
「住宅ローン」「教育ローン」「自動車ローン」のように、特定の資産を購入し、支払いのために融資を受けること。
傾向として、担保(借金のカタ)が必要。融資額は高く、利率は低め。返済方法は「長期分割払い」。

「キャッシング」は英語:Cashing(現金化)が原義。
保証人も担保も必要とせず、目的自由な現金を借りる金融業の形態。
ローンの細分化の結果、顧客に広く受けいれられたものといえる。
「現金化」とは、 本人の「信用力(つまりは借金返済能力)」に対して現金を貸すことのたとえ。
傾向として、無担保のため、融資額は低く、利率は高め。返済方法は建前として「短期になるべく一括払い」。

「キャッシングローン」とは、両者の組み合わせといえる。
金を借りるときはキャッシングの要領で無担保の現金、返済はローンの要領で長期分割返済となる。
というより、現在のキャッシングはだいたいこの形態で完成している。あとは顧客の立場に応じて諸条件が細分化されている。

「破格」「別格」の違い

破格:
「破格値」「破格の待遇」「破格くびき」
先例や基準を破ること。度を超して特別であること。

別格:
「別格のすばらしさ」「別格の強さ」
特別扱いすること。決まった格式以外、例外のこと。

双方で使われている「格」は、ものごとの基準や、人やものの位置づけ・ありかたを示す。
「破格」は、今までのルールを破るところに重点をおく。破った結果、ルールの外に存在する。
「別格」は、今までのルールの枠内で、基準のはるか上に位置したり、位置するよう取りはからうところに重点を置く。
どちらも「特別なすごさ」を共通して持っているが、「別格」より「破格」の方がすごい印象を受ける。

「要求」「要望」「要請」「請求」のちがい

要求:
「待遇改善を要求する」「要求を突きつける」「辞任取り消し要求」
自分がして欲しいと相手に対して強く求めること。

要望:
「ご意見・ご要望の受付」「要望書の提出」
こうして欲しいと望むこと。要求よりも弱い、希望程度の強さ。

要請:
「違法ファイルの削除要請」「見直し要請」「災害国からの派遣・支援要請」
こうして欲しいと、強く願い求めること。「依頼」に近い強さがある。

請求:
「架空請求詐欺」「不当請求」「請求書」「パンフレット・資料請求」
「既存の法律に基づいた権利」にのっとって相手に一定の行為を求めること。

「要」は、強弱はあるが「欲しい」という気持ちを感じる。
「請」は、法律的な響きを感じる。

自分としては、だいたい求め方とその結果でこのように分けられると思う。
「要望」は求める姿勢が弱く、結果はあまりあてにできない。要求に比べると消極的。
「要求」は求める姿勢が強く、結果は当然のものと見込んでいる。一番人間くさく感じる。
「請求」は基本的に法律の適用。法律以外では「法律の適用と同じくらい当然のこと」という前提で一定の結果を求める。法律の持つ硬質の印象を受ける。
「要請」は求める姿勢が「要望」と「要求」の中間ぐらいだが、結果は法律の適用と同じくらいの強さを求めている。何となく腰は低いけど法律的な威圧感が裏に潜んでいるような印象がある。

「必須」「不可欠」の違い

必須:
「必須アミノ酸」「必須科目」「必須ツール」
どうしても必要なこと。「必要」よりも強いニュアンスを持つ言葉。必要は目的が感じられるが、必須は目的以前に必要とする強さを感じる。

不可欠:
「必要不可欠」「不可欠施設」
欠くことのできないこと。「必須」によく似た言葉。

「必須」も「不可欠」も「絶対に必要」という強い意味合いは共通している。
「必須」の「須」は「すべからく~する(当然、ぜひとも~する必要がある)」という意味がある。
「不可欠」の場合、「欠」に「一部分がかけて足りない。あるべきものがない」という意味がある。

「不可欠」だと「一部分だけあるべきものがない、これがなければ全てお終い」という「完全なのが当然」のレベルの強さを字面から感じる。
「必須」は字面だけなら「依頼の皮をかぶった強要」レベルのように思える。もちろん内容は字面より強く、「これがなければ全てお終い」という意味を含んでいる。
自分としては、意味は似ているが「不可欠」の方が「必須」よりも「絶対に必要」のニュアンスを強く感じられる。

「必要不可欠」は似た言葉を重ねて意味を強めているから、「不可欠」「必須」よりも「絶対に必要」ニュアンスが強くなると思う。

「必要」「重要」「貴重」「重大」の違い

必要:
「必要最低限」「必要書類」「必要悪」「必要システム構成」
自分が欲する「もの」「こと」を手に入れるために、なくてはならないもの。

重要:
「重要文化財」「重要参考人」「重要性」「重要度」
大切で必要なこと。ただし「大切」「大事」よりも、客観的で、社会的な評価に耐えられる。

貴重:
「貴重品」「貴重な経験」「貴重資料」
非常に値打ちがあり、大切なこと。有形無形は問わない。需給関係から金銭的に換算するニュアンスを強く感じる。

重大:
「重大事件」「重大違反」「重大発表」「責任重大」
たいへん重い意味を持つこと。印象はよくない。結果的に良くも悪くも社会に衝撃を与えるニュアンスを強く感じる。

必要は「必ず要る」、重要は「重んじ要る」、貴重は「貴び重んじる」、重大の「重」は「程度がひどくはなはだしい」そして大きい。

「必要」は広く使える言葉で、何らかの目的達成を念頭に置いている印象がある。
「重要」は必要の名残はあるが、公共性や客観性を強めた「大切」や「大事」という印象がある。
「貴重」は金銭に交換できなくてもよいが、「もの」の場合、客観的に高い値段がつくことを仮定できなければいけないと思う。経験などは個人の主観しだい。
「重大」は主観・客観を問わず、社会に与える影響が大きいと思われる。

「大切」と「大事」の違いは?

大切:
「限りある自然を大切に」「大切なお知らせ」
本人の心中の思いとして重要、愛情のような気持ちを感じる。

大事:
「大事な用件で出張する」「お体を大事にしてください」
対象を重要なこととして扱わなければ、不利益を被る可能性を示唆しているようで、いつも心中において大きな位置づけをしておく必要を感じる。

どちらも形容動詞で、「きわめて重要」「かげがえのないものを、心を尽くして丁寧に扱う」という意味は同じ。
ただし、大切の「切」は「切る」の意味ではなく、「切なる:心から、ひたすら」の意味で使われている。
大事の「事」は「ことがら、人のすること、仕事」を意味する。名詞形で「大変なこと・大きな仕事や事業」の意味がある。

感覚的には、「大切」よりも「大事」のほうがプレッシャーを感じる。